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第7話 ランニング・ロジック ―45歳PM、走る趣味を実装する― 第三章:低負荷運用への切り替え(LSD理論の実践) その1

急がば回れのロジック

動画の中のコーチは、穏やかな口調で語りかけてきた。

「皆さん、毎回ゼーゼーハーハー言うまで追い込んでいませんか? 実はそれ、逆効果なんです」

 ドキリとした。画面の向こうから見透かされているようだ。  コーチは続ける。  基礎体力がない状態でスピード練習をしても、怪我のリスクが高まるだけ。  まずは「おしゃべりができるくらいのゆっくりしたペース」で長く走ること。  そうすることで毛細血管が増え、全身に酸素を運ぶ能力――いわば、体のエンジンの排気量そのものが大きくなるのだという。

「これを『LSD(ロング・スロー・ディスタンス)』と言います。速く走るための土台作りには、ゆっくり走って、まずは走ることができる体づくりをすることが一番の近道なんです」

 目から鱗が落ちるとは、このことだった。私は今まで、軽自動車のエンジンのまま、アクセルをベタ踏みして「遅い、遅い」と嘆いていたようなものだ。まずはエンジンを大きくする。そのための方法が今の自分にあった「ゆっくり」のペースで走ること。

たいち
たいち

なるほど……。これは「手抜き」じゃない。「効率的なトレーニング」なんだ。

 サボるわけではない。理屈にのっとって、あえてペースを落とすのだ。「楽をして効果が出る」効率を愛する私にとって、これほど甘美な響きはない。その解釈は、ボロボロになっていた私のプライドを救い、心にストンと落ちた。

 翌日。  私は再び夜の街に出た。GPSウォッチの設定を変える。ペース表示(1kmあたり何分か)をメイン画面から外し、代わりに「心拍数」を表示させる。今回のミッションはシンプルだ。「頑張らないこと」。

 シューズの紐を結ぶ。さあ、検証の開始だ。

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