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第10話 ランニング・ロジック ―45歳PM、走る趣味を実装する― 第四章:環境変化への適応(夏用装備の導入)その1

エンジンの熱暴走

6月の下旬。私のランニング生活は順調そのものだった。「頑張らなくていい」というLSDは、私の性格に合致していたし、少しずつ引き締まってきた体は自信を与えてくれた。

 だが、私は甘く見ていた。四季のある日本において、ランナーにとっての最大の敵が、すぐそこまで迫っていることを。

梅雨入りと同時に、空気は一変した。夜になっても気温が下がらない。湿度は不快なほど高い。玄関を出た瞬間に、まとわりつくような熱気を感じる。まるでサウナの中を歩いているようだ。

 それでも私は、「継続こそ力なり」と自分に言い聞かせ、いつものように走り出した。装備は、お気に入りのTシャツと、量販店で買ったスウェット生地のハーフパンツ。これまでは何の問題もなかった、私の標準装備だ。

 走り始めて5分。  手首のGPSウォッチが「ピピッ」と警告音を鳴らした。

たいち
たいち

……ん? まだウォーミングアップの段階だぞ?

 画面を見る。ペースはいつも通りの「キロ9分」。ゆっくりとしたジョグだ。だが、心拍数のゾーンを示すバーは、すでにイエロー(有酸素運動の上限)を振り切り、レッド(無酸素運動)に突入しようとしていた。

 おかしい。いつもなら「青(脂肪燃焼ゾーン)」で安定しているはずなのに。自分の感覚に耳を澄ませてみる。  ……確かに、苦しい。  心臓が早鐘を打っている。呼吸も荒い。そして何より、シャツが汗を吸ってなかなか乾かない。そして体の中に熱がこもって逃げていかない感覚がある。

 私の体というエンジンは、外気温と湿度のせいで冷却機能を失い、オーバーヒートを起こしかけていたのだ。ペースを落としても、心拍数は下がらない。1キロも走らないうちに、私は「今日はこれ以上危険だ」と判断し、歩いて引き返すしかなかった。

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